十日ほど前、乳母を連れて清水寺に参詣に参った帰路、人形使いに身を※[#「にんべん+峭のつくり」、第4水準2−1−52]《やつ》した恐ろしい恐ろしい人買《ひとか》いに誘拐されたのでございます」
「おおさようか、益※[#二の字点、1−2−22]気の毒、さぞ両親《ふたおや》が案じていよう、計らず逢ったも何かの縁、人を付けて帰して遣わす」
「はい有難うはございますが、母と妾《わたくし》とは継《まま》しい仲、たとえ実家へ帰りましても辛《つら》いことばかりでございます」乙女はまたも※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]たけた顔を袖へ埋めて泣くのであった。
「かえすがえすも不幸な身の上、はてこれは困ったことだ」頼正はその眼を顰《ひそ》めたが、「ところで誘拐《かどわかし》の人買いは今どこに何をしておるぞ?」
「どこにどうしておりますやら、和田峠とやら申す山で、ようやく人買いの眼を眩《くら》ませ、夢中でここまで逃げては来ましたが、知人《しりびと》はなし蓄《たくわ》えもなし、うろうろ徘徊《さまよ》っておりますうちには乞食非人に堕《お》ちようとも知れず、また恐ろしい人買いなどに捕えられ
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