して失敗に終わったのである。
爾来《じらい》若殿頼正の心は怏々《おうおう》として楽しまなかった。第二回目を試みようとしても応ずる者がないからである。
ある夜、一人城を出て、湖水の方へ彷徨《さまよ》って行った。それは美しい明月の夜で湖水は銀のように輝いている。ふと、その時、頼正は、女の泣き声を耳にした。
湖水の岸に柳があり、その根方《ねかた》に一人の女が、咽《むせ》ぶがように泣いている。
頼正は静かに近寄って行った。
「見ればうら[#「うら」に傍点]若い娘だのに、何が悲しくて泣いておるぞ?」こう優しく云ったものである。
女はハッと驚いたように、急に根方から立ち上がったが、その女の顔を見ると、今度は頼正が吃驚《びっく》りした。
月の光に化粧された、その女の容貌《きりょう》が、余りにも美しく余りにも気高《けだか》く、あまりにも※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《ろう》たけていたからである。
一九
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜《おぼろづきよ》にしくものはなし。
敢《あえ》て春の月ばかりではない、四季を通じて月の光は万象《ば
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