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驚倒《きょうとう》す暗中銃丸跳るを、野田城上|笛声《てきせい》寒し、誰か知らん七十二の疑塚《ぎちょう》、若《し》かず一棺湖底の安きに
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 最後《しまい》の二句を解釈すると、昔|支那《シナ》に悪王があって、死後塚の発《あば》かれんことを恐れ、七十二個の贋塚《にせづか》を作ったが、それでもとうとう発《あば》かれてしまった。武田信玄はそんなことはせずに、死骸を湖底に埋めさせた。この方がどんなに安心だか知れない――つまりこういう意味なのである。
 いかにもこれは七十二の疑塚より確かに安心には相違ないが、しかし絶対に安心とは云えない。諏訪湖の水の乾く時が来たら、死骸は石棺のまま現われなければならない。そうでなくとも好奇《ものずき》の者が、金に糸目を付けることなく、もし潜水夫を潜らせたなら、信玄の死骸のある場所が知れたなら、それから後はどんなことでも出来る。だから絶対に安心とは云えない。
 果然《かぜん》、文政年間に好奇《ものずき》の人間が現われて、信玄の石棺を引き上げようとした。
 成功したか失敗したか? その人間とは何者か? それは物語の進むにつれて自《お
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