の》ずと了解されようと思う。
 そうして実にこの事件は、この「八ヶ嶽の魔神」という、きわめて伝奇的の物語にとってもかなり重大な関係がある。したがって物語の主人公、鏡葉之助その人にとっても重大な関係がなくてはならない。
 鏡葉之助の消息を一時途中で中絶させ、事件を他方面へ移したのもこういう関係があるからである。

 信州諏訪の郡《こおり》高島の城下は、祭礼のように賑わっていた。
 ※[#「水/(水+水)」、第3水準1−86−86]々《びょうびょう》と湛《たた》えられた湖の岸には町の人達、老若男女が湖水を遥《はる》かに見渡しながら窃々《ひそひそ》話に余念がない。
「船が沢山出ましたな」
「二十隻あまりも出ましたかな」
「漁船と異《ちが》って立派ですな」
「諏訪家の幔幕が張り廻してある」
「乗っておられるのはお武家様ばかりだ」
「お武家様と漁師とは遠目に見ても異いますな」
「しかし今度のお企《くわだ》てはちとご無理ではないでしょうかな」
「さあそれは考えものだ」
「いや全く考えものだ」
「噂によると神宮寺の巫女《みこ》が大変怒っているそうですよ」
「あいつらが怒るとちょっと恐い」
「名に負う
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