見据《みす》え、紋兵衛は瞬《まじろ》ぎもしなかったが、ようやくホッと溜息を吐《つ》くと、「人違いであった。山吹ではなかった。そうだあなたは葉之助様だ……が、それにしてもあなたのお顔があの山吹に酷似《そっくり》とは? おお酷似《そっくり》じゃ酷似じゃ! やっぱりお前は山吹だ! 汝《おのれ》どこからやって来たぞ!」
 また狂わしくなるのであった。
「殿の命で、城中から」
「いいや違う。そうではあるまい。八ヶ嶽から来たのであろう?」
「殿の命で、城中から」
「嘘だ嘘だ! 嘘に相違ない! 八ヶ嶽の窩人《かじん》部落! 汝《おのれ》そこから来たのであろう! 怨《うら》まば怨め! 祟《たた》らば祟れ! 捨てられたが口惜しいか! ……睨《にら》むわ睨むわ! おお睨むがいい。俺も睨んでやる俺も睨んでやる!」
 血走って眼をカッと開け、紋兵衛は葉之助を睨んだものである。
 その時、遥《はる》か戸外《おもて》に当たって咽《むせ》ぶがような泣くがような哀々《あいあい》たる声が聞こえて来た。それは大勢の声であり、あたかも合唱でもするかのように声を合わせて叫んでいるらしい。しかし叫びと云うよりも、むしろそれは嘆
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