願なので、細い細い糸のような声から高い高い叫びになり、それが悲しい笛の音のように尾を引いて綿々と絶えぬのであった。
「お返しくだされ。お返しくだされ。宗介天狗《むねすけてんぐ》の鎧冑《よろいかぶと》、どうぞどうぞお返しくだされ」
 こう叫んでいるのであった。

         一四

 ムックリ刎《は》ね起きた紋兵衛は、血走った眼をおどおど[#「おどおど」に傍点]させ、痙攣《ひきつ》った唇を思うさま曲げ、手を胸の辺で掻き捲《まく》り、肩に大波を打たせたかと思うと、
「あ、あ、あ、あ」とまず喘ぎ、「来たア!」と叫ぶとヒョロヒョロ立ち、「来てくれ! 来てくれ! 誰か来てくれ! 人殺しだア! 誰か来てくれ! ……おお鏡様葉之助様! あいつらが来たのでござります! お助けなされてくださりませ! 人助けでござります、お助けなされてくださりませ! ……返せと云って何を返すのだ! 鎧冑? そんなものは知らぬ! おおそんなものを何んで知ろう! よしんば[#「よしんば」に傍点]知っていようとも、みんな過ぎ去った昔の事だ! ならぬ、ならぬ、返すことはならぬ! いやいや俺は知らぬのだ!」
「五味多四郎様!
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