「さようか、そうしてお名前は?」
「鏡葉之助様と仰《おお》せられました」

         一三

 妖怪《あやかし》退治の命を受け、城を退出した葉之助は、小原村二本榎、大鳥井紋兵衛の宏大な邸を、供も連れず訪れた。取次ぎに出た若い女――それは娘のお露であったが、そのお露の姿を見ると、彼の心は波立った。
「美しいな」と思ったからである。しかしそれとて軽い意味なので、一眼惚れと云うようなそんなところまでは行っていない。
 一旦引っ込んだその娘が再びしとやかに現われた時、また「美しいな」と思ったものである。
 お露は夜眼にも知れるほど顔を赧《あか》らめもじもじ[#「もじもじ」に傍点]したが、
「むさくるしい処《ところ》ではございますが、なにとぞお通りくださいますよう」
「ご免」と云うと葉之助は、刀を提げて玄関を上がる。
 間《ま》ごと間ごとを打ち通り、奥まった部屋の前へ出たが、飾り立てた部屋部屋の様子、部屋を繋《つな》いだ廻廊の態《さま》、まことに善美を尽くしたもので、士太夫の邸と云ったところでこれまでであろうと思われた。それにも拘《かかわ》らず邸内が陰森《しん》として物寂しく、間ごとに点
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