俺は正気だ!」
「病気の基を極《きわ》めずにどうして病いを癒すことが出来る」
「癒すにゃア及ばねえうっちゃって[#「うっちゃって」に傍点]置いてくれ!」
「おお、そうか、それならよい」
ズイと北山は立ち上がった。「今後招いても来てはやらぬぞ」
「…………」
「貴公、死相が現われておる。取り殺されるも長くはあるまい」
「わッ」と突然紋兵衛は畳の上へ突っ伏したが、
「お助けくだされ北山様! お願いでござります天野先生! 殺されるのは嫌でございます! 申します申します、何んでも申します!」
「おお云うか。云うならよい。天野北山聞いて遣わす。そうして病気も癒してやる……何をやって金を儲けた?」
「はいそれは……」
と云いかけた時奥の襖がスーと開いて若い女が現われた。紋兵衛の娘のお露である。
「お父様」と手を支《つか》え、「只今お城のお殿様からお使者が参りましてござります」
「お使者?」
と紋兵衛は不思議そうに、「ハテなんのお使者であろう?」
「ご病気見舞いだとおっしゃられました」
「どんなご容子《ようす》のお方かな?」
「はい」とお露は面羞《おもは》ゆそうに、「お若いお美しいお侍様で」
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