どうも私《わし》には受け取れない。どうでもあなたの心の中には不安なものがあるらしい。ひどく神経を痛めておる……で、私は改めて訊くが、貴公どこの産まれだな?」
「はい、江戸でございます」
「江戸はどこだな? どの辺だな?」北山は遠慮なく押し詰める。
「はい」と紋兵衛は狼狽しながら、「江戸は芝でございます」
「おおさようか、芝はどこだ?」
「はい、芝は錦糸堀で……」
「何を痴《たわ》けめ!」と北山はカラカラとばかり哄笑《こうしょう》した。
「芝にはそんな所はない、錦糸堀は本所《ほんじょ》だわえ!」
「おお、そうそうその本所で、私は産まれたのでございます」
「うん、そうか、では聞くが、錦糸堀は本所のどの辺にあるな?」
「はい、本所のとっつき[#「とっつき」に傍点]に」
「アッハハハハ、まるで反対だ。錦糸堀は本所の外《はず》れにある……貴公江戸は不案内であろう? ……云いたくなければ云わないでもよい。産まれ故郷の云えないような、そういう胡散《うさん》な人物には今後薬は盛らぬまでだ……ところでもう一つ訊きたいのは、十万に余る貴公の財産、いったい何をして儲《もう》けたのか?」
北山はじっ[#「じ
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