た浪人もあり、手代、番頭、小作頭もある。それらさまざまの人物がギッシリ一部屋に集まった。四方に眼を配っていたが、番頭の佐介はこう云うと紋兵衛の顔を覗き込んだ。
「ご覧なさいませ部屋の中には行灯《あんどん》が十もござります。なんの暗いことがございましょう」
「いいや暗い、真っ暗だ。早く灯心を掻《か》き立ててくれ」
「それじゃ卯平《うへい》さん掻き立ててくんな」
「へい」と云うと手代の卯平は、静かに立って一つ一つ行灯の火を掻き立てた。いくらか部屋が明るくなる。
「時に今は何時《なんどき》だな?」
 気遣《きづか》わしそうに紋兵衛は訊く。
「はい」と佐介はちょっと考え、「初夜《しょや》には一|刻《とき》(二時間)もございましょうか」
「まだそんなに早いのか」
「宵《よい》の口でございます」
「ああ夜が早く明ければよい……俺は夜が大嫌いだ。……俺には夜が恐ろしいのだ」
 ザワザワと吹く春風が雨戸を通して聞こえて来た。と、コトンと音がした。
「あれは何んだ? あの音は?」
「さあ何んでござろうの」剣術使いの佐伯|聞太《ぶんた》は、大刀を膝の辺へ引き付けながら、「鉢伏山《はちぶせやま》から狐《きつ
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