たり、最後にはきっと声を揃え、「返してくだされ! 返してくだされ!」と、喚《わめ》き立てるというのである。世間の人の評判では、その異形な怪物こそは、紋兵衛のために苦しめられたいわゆる可哀そうな債務者の霊で、家や屋敷を取り上げられたのを死んだ後までも怨恨《うらみ》に思い、それで夜な夜な現われては、「返してくだされ! 返してくだされ!」と、喚き立てるのだというのであった。
一一
相手が兇悪な盗賊とかまたは殺人《ひとごろし》の罪人とか、そういうものを退治るなら一も二もなくお受けしようが、亡魂《ぼうこん》とあっては有難くない――これが葉之助の心持ちであった。
「主命を拒《こば》むではござりませぬが、私如き若年者より、他にどなたか屈強《くっきょう》なお方が……」
「いや」と駿河守は遮《さえぎ》った。「お前が一番適当なのだ。拒むことはならぬ、是非参るよう……新刀なれども堀川国広、これをそちに貸し与える。退治致した暁《あかつき》にはそちの差料《さしりょう》として遣わそう」
「そうまで仰せられる殿のお言葉をお受け致《いた》さずばかえって不忠、参ることに致します」
「おお参るか。
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