が一番斬り易いかな?」
こう押し詰めて来て葉之助は、「肩だ!」と叫ばざるを得なかった。
「肩ほど斬りよいものはない。相手の右の肩先から左の肋《あばら》へ斜《はす》に斬る。すなわち綾袈裟掛《あやけさが》けだ! 右へ逸《そ》れても腕を斬る。左へ逸れれば頸《くび》を斬る、どっちにしても急所の痛手だ。うんこれがいい」
と思い付いてからは、彼は何んの躊躇《ちゅうちょ》もせず袈裟掛けばかりを研究した。腕は既に出来ている、加うるに珍らしい天才である、それに一念が籠もっているのでその上達の速《すみや》かさ、半年余り経った頃にはかなり太い生の立ち木を股から斜めに幹をかけてサックリ木刀で割ることが出来た。
「宮本武蔵の十字の構えを、有馬喜兵衛は打ち破ろうと、木の股ばかりを裂いたというが、よも木の幹は割れなかったであろう――いかに松崎が偉いと云っても武蔵に比べては劣るであろう。もう一年、もう二年、練磨に練磨を積んだ上、松崎に試合を申し込み、清左衛門めを打ち据えてくれよう」
仮想の敵があるために、彼の技倆は一日一日と上達をするばかりであった。
こうして六年は経過した。葉之助は十八歳となり、一人前の男と
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