」
駿河守は頷いた。
「今日の競技はこれで終わる。者ども続け!」
と云い捨てると駿河守は馬に乗った。タッタッタッタッと帰館になる。近習若侍に立ち雑《まじ》り葉之助も後を追う。
松崎清左衛門は何が不足で葉之助の入門を拒絶《ことわ》ったのであろう? それは誰にも解らない。しかし当の葉之助にとっては無念千万の限りであった。
「そういう訳なら師を取らずに己《おのれ》一人工夫を凝らし、東軍流にて秘すところの微塵《みじん》の構えを打ち破り清左衛門めを打ち据えてくれよう」
間もなく葉之助は心の中でこういう大望を抱くようになった。彼はご殿から下がって来るや郊外の森へ出かけて行き、八幡宮の社前に坐って無念無想に入ることがあり、またある時は木刀を揮《ふる》って立ち木の股を裂いたりした。
「一にも押し、二にも押し、これが相撲の秘伝だそうだ。一にも突き二にも突き、これが剣道の極意である。しかし極意であるだけに誰も学んで珍らしくない……さてそれでは突き以外に必勝の術はあるまいか」
来る夜も来る夜も葉之助はこの点ばかりを考えた。しかし容易には考え付かない。
「突きを止めれば斬《き》る一方だが、さてどこ
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