居睡りをしたり、突然大きな欠伸《あくび》をしたり、そうしていつも用のない時にはうつらうつらと眼をとじて、よく云えば無念無想、悪く云えば茫然《ぼんやり》していた。
「武道の麒麟児《きりんじ》と思ったに葉之助殿はお人好しだそうだ」「食わせ物だ食わせ物だ」
「ぼんやりとしてノッソリとして、ヌッと立っている塩梅《あんばい》は独活《うど》の大木というところだ」
「何をやっても一向冴えない。ボーッとしたところは昼の行灯《あんどん》かな」
「昼行灯昼行灯、よい、これはよい譬喩《たとえ》じゃ」
「昼行灯様! 昼行灯様!」
朋輩どもは葉之助の事を間もなく昼行灯と綽名《あだな》した。
「はてな?」
と駿河守は首を傾げた。「あれほど利口な葉之助が、時々心を取り失うとはちょっとどうも受け取れないことだ。事実脳が弱いのかそれとも明哲保全《めいてつほぜん》の策か? ……これは一つ試して見よう」
ある日にわかの殿の仰せで、弓射の試合を始めることになった。
駿河守は馬に乗り近習若侍を後に従え、矢場を指して走らせて行く。
矢場には既《すで》に弓道師範|日置《へき》流に掛けては、相当名のある佐々木源兵衛が詰めか
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