はこれは分に過ぎたる有難きご諚《じょう》ではござりますが、葉之助儀は脳弱く性来いささか白痴にござりますれば……」
「これこれ弓之進、痴《たわ》けたことを申すな!」
 濶達の性質を露出《まるだ》しにして駿河守は怒鳴るように云った。
「性来白痴の葉之助が、近藤司気太、白井誠三郎、山田左膳というような武道自慢の若者どもを打ち込むほどの技倆《うでまえ》になれるか!」
「恐らく怪我勝ちにござりましょう」
「石渡頼母の三男などは代稽古の技倆ということだが、葉之助とは段違いだそうだ。そんな白痴なら白痴結構。是非明日より出仕をさせろ」
 こう云われてはしかたがない。それに有難いご諚である。弓之進はお受けをした。
 で、翌日から葉之助はご前勤めをすることになった。
 艶々した前髪立ち、年は十二というけれど一見すれば十八、九、鼻高く眼涼しく、美少年であって且《か》つ凛々《りり》しい眼の配り方足の運び方、武道の精髄に食い入ったものである。
「何んのこれが白痴なものか」
 駿河守は一眼見るとひどく葉之助が気に入った。
 しかし葉之助は往々にして度外れた事をするのであった。例えばご前で足を延ばしたり、歩きながら
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