鏡家の養子葉之助殿は十二歳だということであるが一見十八、九に見えますな」
 家中の若侍達寄るとさわると葉之助の噂をするのであった。
「ノッソリとしてズングリとしてまるで独活《うど》の大木だ」
 などと悪口する者もある。
「ノッソリの方は当たっているがズングリの方はちと相応《そぐ》わぬ。どうしてなかなか美少年だ」
 なあんて中には褒《ほ》めるものもある。
「ところでどうだろう剣道の方は?」
「無論駄目駄目。大下手《おおへた》とも」
「いやいやまんざらそうでもあるまい。飯田の南条右近というは小野派一刀流では使い手だそうだ。その方の三男とあって見れば見下《みくだ》すことは出来ないではないか」
「論より証拠立ち合ったら解る」
「いやいや相手はご家老のご養子、無下《むげ》に道場へ引っ張って行って打ち据《す》えることもなりがたい」
「武芸には身分の高下はない」
「しかし相手はまだ子供だ、十二歳だというではないか。我々は立派な壮年でござる」「と云ってあの仁とて十八、九には、充分見えるではござらぬか」「たとえ幾歳《いくつ》に見えようと年はやはり年でござる」「よろしいそれでは注意して柔かくあしらって[#
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