「あしらって」に傍点]やりましょう」「さようさ、それならよろしかろう」
 ある日、これらの若侍どもが、立川町に立っている中条流《ちゅうじょうりゅう》の道場でポンポン稽古《けいこ》をやっていた。主人の松崎清左衛門はきわめて温厚の人物であったがちょうど所用で留守のところから、代稽古の石渡三蔵が上段の間に控えていた。
 通りかかったのが葉之助で、若党の倉平を供に連れ、ふと武者窓の前まで来ると小気味のよい竹刀《しない》の音がする。
「ちょっと待て倉平」
 と声をかけて置いてひょい[#「ひょい」に傍点]と窓から覗いていた。
 早くも見付けた若侍ども、「おや」と一人が囁《ささや》くと、「うん」と一人がすぐに応じる。バラバラと二、三人飛び出して来た。
「これはこれは葉之助殿、そこでは充分に見えません。内《なか》にはいってご覧ください」
「さあさあ内へ、さあさあ内へ」
 まるで車掌が電車の中へ客を追い込もうとするかのようにむやみに内へを連発する。
「これはどうもとんだ失礼、覗きましたは私の誤《あやま》り、なにとぞご勘弁くださいますよう」葉之助はテレて謝った。
「いやいやそんな事は何んでもござらぬ。ポン
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