捨する筈がない。
 ムラムラと土佐犬は走り掛けた。忽《たちま》ち格闘が行われた。人間は見る見る引き裂かれた。一匹の犬は腕をくわえ、一匹の犬は首をくわえ、一匹の犬は足をくわえ、嬉しそうに尻尾を振った。
 向こうに一団、こっちに一団、取り組み合っている人影があった。熊と、豹と、狼と、取っ組み合っている人間であった。
 みるみる死骸が増えて行った。
 投げ捨てられた松明が、メラメラと焔《ほのお》を上げていた。
 百人余りの一団が、建物の方へ走っていた。教主を守護した信者達が、そこに開いている戸口から、屋内へ逃げ込もうとしているのであった。
 二頭の豹が飛び掛かって行った。数人の者が引き仆《たお》された。が、団体は崩れなかった。遮二無二《しゃにむに》戸口の方へ走って行った。三頭の熊が飛び掛かった。二頭の豹と力を合わせ、信者達を背中から引き仆した。
 殺された者は動かなかった。負傷《ておい》の者は刎《は》ね起きた。そうして団体と一緒になった。
 宗教的信仰の力強さが、そういうところでも窺《うかが》われた。教主を守れ! 教主を守れ! 食い付かれても仆されても、団体から離れようとはしなかった。
 猛獣の群は襲い掛かった。
 十頭の狼が飛びかかった。
 瞬間に十人が食い仆された。しかしみんな[#「みんな」に傍点]飛び起きた。
 教主を守れ! 教主を守れ! 教主を守った一団は、だんだん戸口へ近寄って行った。
 猛獣の群れの襲撃は、益※[#二の字点、1−2−22]惨酷の度を加えた。十二、三人が死骸となった。
 だがとうとう石段まで来た。
 その時牛が走りかかった。
 一団の只中へ角を入れた。
 バラバラと信徒は崩れ立った。
 しかし次の瞬間には、またムラムラと集まった。とまた牛が突き崩した。バラバラと信徒達は崩れ立った。しかし次の瞬間には、またムラムラと集まった。
 教主を守れ! 教主を守れ!
 狼はヒュー、ヒューと宙を飛んだ。豹は人間の頭を齧《かじ》った。猛犬は足へ喰い付いた。
 教主を守れ! 教主を守れ!
 一団は石段を上って行った。
 とうとう彼らは戸口まで来た。
 彼らは家の中へ崩《なだ》れ込んだ。
 熊も豹も狼も、つづいて家の中へ飛び込んだ。土佐犬が続いて飛び込んだ。
 つづいて葉之助も踊り込んだ。
 こうして格闘は中庭から、家の中へ移された。
 蜘蛛手《くもで》に造られてあ
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