げに罵った。
「これよっく[#「よっく」に傍点]聞け大岡様は、成程貴様とそっくり[#「そっくり」に傍点]だが、只一点違う所は、左の眉尻に墨子《ほくろ》がある。どうだどうだ一言もあるめえ!」

     二三

 どうしたものか是を聞くと、越前守は顔色を変えた。しかし依然として、威厳を保ち、グッと香具師を睨み付けた。
「これ莫迦者、何を言うか! 二人大岡がある筈が無い。江戸町奉行大岡忠相、拙者を置いて他にあろうか?」
「アッハッハッハッ、成程なあ。盗賊の身であり乍ら、盗賊を縛る町奉行、大岡様を騙《かた》って来る程の奴一筋縄では白状しまい。……そこで貴様に聞くことがある、一体俺を誰だと思う?」
「うむ」と云うと越前守は、大音上げて呼ばわった。
「城の方々、お出合いなされ! 大盗雲切仁左衛門が、香具師姿に身を窶し、金の鯱を奪おうと、お城に入り込んでございますぞ!」
 バタバタと四方八方から、宿直の武士が現れた。――斯ういけば大いに可いのであったが、一人の捕方も現れず、城中は寂然と静まっていた。
「アッハッハッハッ馬鹿野郎! 途方もねえ大声を上げやあがる。それで一匹の鼠も出ねえ。気の毒千万笑止
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