礼な奴だ」と思い[#「思い」は底本では「思ひ」と誤記]乍ら、越前守は睨み付けた。
と、ピッタリと襖が閉じ、引っ返して行く足音がした。
「妙な奴が覗いたものだ」越前守は苦笑した。
「頭巾を冠り袖無を着、伊賀袴を穿いた香具師風、城内の武士とは思われない。……ははあ、大奥のお伽衆だな」
その時スッスッと足音がして、軈て襖が静かに開いた。
「お待たせ致しました、いざ此方へ」それは北村彦右衛門であった。
幾間か部屋を打ち通り、通された所が大広間、しかし誰もいなかった。
「しばらくお待ちを」と云いすてて、また彦右衛門は立去った。
しばらく待ったが誰も来ない。
「これは可笑しい」と越前守は、多少不安を覚えて来た。
と、正面の襖が開き先刻隙見をした香具師が、チョロリと部屋の中へ這入って来た。
「これはこれは大岡様、ようこそおいで下さいました。何は無くとも、先ず一献、斯う云う所だが然うは云わねえ。ヤイ畜生飛んでもねえ奴だ! 人もあろうに大岡様に化け、所もあろうに名古屋城内へご金蔵破りに来やがったな! 余人は旨々|誑《たば》かれても、この俺だけは誑かれねえ」
膝も突かず立ったまま、香具師は憎さ
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