でございます」
 二之御蔵、三之御蔵四、五、六の御蔵を過ぎたが、何の御蔵も用心手薄く、扉が半開きになっていたり番士が眠っていたりした。
 透《すき》御門から御深井丸へ出、御旅蔵の東を抜け、不明門から本丸へ這入った。矢来門から玄関へかかり、中玄関から長廊下、行詰まった所が御殿である。
「暫くお控え[#「お控え」は底本では「お控へ」と誤記]下さいますよう」
 山村彦右衛門は引っ込んだ。
 一室に坐った大岡越前守、何やら思案に耽り乍ら、ジロジロ部屋の中を見廻わした。
 御殿の中が騒がしい。歩き廻わる足音がする。何んとなく取り込んでいるらしい。
「大分狼狽しているようだ」ニンヤリ笑ったものである。「御殿の扉を開けて見せたり、番士を故意と、眠らせて見せたり、手数のかかった小刀細工、それで俺の眼を眩まそう[#底本では「呟まそう」]とは、些少《ちと》どうも児戯に過ぎる……いずれ御蔵内の黄金なども、何処かへ移したことだろうがさて何処へ移したかな? これは是非とも調べなければならない」
 その時正面の襖が開いた。だが、一杯に開いたのではない、ほんの細目に開いたのであった。誰か隙見をしているらしい。
「無
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