側を守らせ、越前守が登城したのは、それから間も無くのことであった。幅下門から榎多御門、番所を通ると中庭で、北へ行けば西之丸、東へ行けば西柏木門、そこから本丸へ行くことが出来た。どうしたものか本丸へは行かず、御蔵門から西之丸の方へ、越前守だけを案内した。
 これには深い意味があった。と云うのは西之丸に、六棟の土蔵が立っているからで、それを見せようとしたのであった。
 案内役は勘定奉行、北村彦右衛門と云って五十歳、思慮に富んだ武士であった。
 こうして一之蔵へ差しかかったが、見れば扉が開いている。
 如何にも越前守は驚いたように、蔵の前で俄に足を止めた。
「これは近来不用心、土蔵の扉が開いて居ります」
「お目に止まって恐縮千万」こうは云ったものの北村彦右衛門、内心では「締めた」と呟いた。「番士の者共の不注意でござる。併し内味が空っぽでは、つい警護も疎かになります」
「左様なこともございますまい。大納言様はご活達、随分派手なお生活を、致されるとは承わっては居るが、敬公様以来貯えられた黄金、莫大なものでございましょう」
「いやいや夫れもご先代迄で、当代になりましてからは不如意つづき、困ったもの
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