は夫れとして、大岡越前守様が来ていようとは、俺に執っちゃあ寝耳に水だ! いや何うも驚いたなあ」じっと思案に耽ったが「兎も角俺の仕事も済んだ。どれソロソロ引き上げようか」
屋根の傾斜をソロソロと下った。髪編紐を伝わり四重の屋根へ、素早く香具師は下り立った。
「殿様、ゆっくり大屋根から、城下を眺めさせて戴きやした。えらい景気でございますなあ」
ヒョイと部屋の中へ飛び込んだ。
お半の方と宗春は驚いたように眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85、100上−6]《みは》った。だが香具師も眼を※[#「目+爭」、読みは「みは」、第3水準1−88−85、100上−7]った。お半の方が泣き濡れて居り宗春がひどく[#「ひどく」に傍点]寂しそうに、悄然と立っているからであった。
二二
さて其夜のことである。
若松屋へ城中から使者が行った。
江戸の町奉行大岡忠相に、宗春話し度いことがある。夜分ではあるが登城するよう。――これが使者の口上であった。
「かしこまりましてございます」
白を切った所で仕方が無い。大岡越前守はお受けをした。
白石治右衛門、吉田三五郎、二人の家来に駕籠
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