味が悪くなったよ」
若松屋の主人仁右衛門は、もう一度如何にも気味悪そうに云った。「ねえ番頭さん、奥へ行って、お話のご様子を立ち聞きしておいでよ」
「へえ、お客様のお話をね」気の進まない様子であった。「失礼にあたりはしませんかね」
「そりゃあ解ったら失礼にあたるさ。解らないように立ち聞くのさ」
「あんまり可い役じゃございませんな」
番頭嘉一は不精無精に、足音を盗んで奥へ行った。
此処は奥の部屋であった。
三人が小声で話していた。
「吉田三五郎、どうであった?」
こう云ったのは四十がらみの男、一つか二つ若いかも知れない。商人風につくって[#「つくって」に傍点]はいるが、商人などとは思われない程、立派な風采の持主であった。
「殿、旨く参りました」
小間物屋喜助と宣って来た、三十がらみの若者が云った。「例の香具師を利用して、阿片をお城へ持たせてやりました」
「うむ然うか、それは可かった」殿と呼ばれる四十がらみの男は、微妙な薄笑いを浮かべたが、
「さて其例の香具師だが、雲切仁左衛門に相違無いかな?」
「どうやらそんな[#「そんな」に傍点]ように思われます」
「で天主閣の唸き声は?」
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