「あれは滑稽でございました。大凧だったのでございます」
「そんな事だろうと思っていたよ」殿と呼ばれる四十男は、復も微妙に薄笑いをした。
「おそらく其凧で空へ上り、鯱鉾を盗ろうとしたのだろう」
「そんなようでございます。轆轤《ろくろ》仕掛の大凧で、随分精巧に出来て居ました」
「香具師も香具師だが尾張様には、随分乱行をなさるようだな」
「お半の方という側室を愛され、他愛が無いようでございます」
「うむ、他からもそんな[#「そんな」に傍点]事を聞いた」
「さて其側室のお半の方、容易ならぬ悪事を企んで居ります」
「ほほう然うか、どんな悪事だな?」
「はい殺人でございます」
「で、誰を殺そうとするのか?」
「はい、まだ、そこ迄は探って居りません」
「ああ然うか、それは残念、ひとつ其奴を探ってくれ」
「かしこまりましてございます」
「それは然うと御金蔵には、多額の黄金が有るそうだな?」
殿と呼ばれる四十男は、此処でキラキラと眼を光らせた。
「御三家筆頭の尾張様、唸る程黄金はございましょう」
三十がらみの男が云った。
「それが何うも可くないのだ。狂人に刄物という奴さ、不祥のことだが尾張様に、ご謀
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