「そうです今日は来ないようです」
「あれも気味の悪い老人だね」
「年から云えば八十にもなろうか、それでいて酷くピンシャンしています」
「あの人の方が光圀様のようだ」
 これが帳場での噂であった。
 或日元気の可い三十がらみ[#「がらみ」に傍点]の、商人風の男が、ひょこりと店先へ立った。
「鳥渡お訊ね致します」
「へえへえ何んでございますかね」
「お家に江戸のお客様が、お二人泊って居られましょうね?」
「へえ、お泊りでございます」
「私は江戸の小間物屋で、喜助と申す者でございますが、鳥渡お二人様にお目にかかりたいんだ」
「鳥渡お待ちを」
 と云いすてて、番頭は奥の方へ小走って行った。
 と、すぐに引っ返して来た。
「お目にかかるそうでございます」
「ご免下さい」
 と男は上った。
 後を見送った帳場の主人は、首を捻ったものである。
「どうも此奴も小間物屋じゃあねえ」
 そこへ番頭が帰って来た。
「今のお客様を何う思うね?」
「さあ」番頭も首を捻った。「矢っ張り何うもお武士さんのようで」
「私は何んだか気味が悪くなったよ」
 主人は眼尻へ皺を寄せた。

     一七

「私は何んだか気
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