はいはい有難う存じます。さあ只今は是と申して……」
「ふうん無いのか、慾の無い奴だな」
「おお殿様、こうなさりませ」お半の方が口を出した。「物慾の無い香具師殿、物を遣っても喜びますまい。それよりご禁制の天主閣の頂上へ上るのをお許しになり」
「これこれお半、それは不可ない」宗春は鳥渡驚いたらしく「家来共が苦情を云おう」
「ホッホッホッホッ」とお半は笑った。「六十五万石のお殿様が、家来にご遠慮遊ばすので」
「莫迦を云え」と厭な顔をした。「何んの家来に遠慮するものか」
「ではお礼として香具師殿を、天主閣へお上《のぼ》せなさりませ」
「香具師、お前は何う思うな?」
「これは結構でございますなあ。あの高いお天主へ上り、名古屋の城下を眺めましたら、さぞ可い気持でございましょう」香具師の眼はギロリと光った。
「うん望みなら上らせてやろう。よし家来共が何を云おうと、一睨みしたら形が付く」
「はいはい左様でございますとも」お半の方はニンヤリと笑った。「香具師殿。お礼でございます」
「お半の方様ありがたいことで」
 こう香具師は嬉しそうに云ったが、腹の中では不思議であった。
「ははあ余っぽど眠剤が、気に入
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