ものさ」香具師は温室を出て行った。「じゃあ爺さん復来るぜ」
老人は返辞をしなかった。
香具師はスタスタと行って了った。
「やれやれ」と老人は呟き乍ら、寝台へトンと腰を下ろした。「俺の大役も済んだらしい」
ヒョイと頭へ手をやった。と、白髪の鬘が取れた。その手で顔をツルリと撫でた。と、若々しい顔になった。
三十前後の壮漢が、老人の殼から抜けて出た。
その翌日のことであった。
香具師はお城へ出かけて行った。
「おお香具師か、よく参った」尾張宗春は愛想よく云った。
「さて殿様」と香具師は、気恥しそうに小鬢を掻いた。「ええご愛妾お半の方様へ、献上物を致し度いので」
「ほほう」と宗春は呆れたように「これは不思議だ、どうしたことだ、お前とお半は仲悪ではないか?」
「はい左様でございます。で仲宜く致したいので」
「おお然うか、それは結構。同じ俺に仕えている者が、仲が悪くては気持が悪い。仲宜くしたいとは宜く云った。よしよしお半を呼ぶことにしよう。……これよ、誰かお半を呼べ」
間も無くお半の方が来た。
「これはこれはお半の方様、ご機嫌よろしう[#「しう」はママ]ございます」ニタニタ香具師は
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