顔をした。「だが一体お前さんは、どういう素性の人間なんだい?」
「そいつあお互云わねえ方がいい。その中自然と解るだろうよ」
「兎に角只の鼠じゃあねえな」
「ナーニ案外白鼠かもしれねえ」
「どう致しまして、大悪党だろう」
「お前こそ何ういう人間なんだい?」老人はヘラヘラ笑い乍ら訊いた。
「お前が云えば俺も云うよ」
「まあまあ夫れは此次にしよう。お互浅黄の頭巾を脱ぐと、気不味いことが起るかもしれねえ。……それは然うとお半の方だが、お前に何か目算があるなら、仲宜くした方が宜かろうぜ。女子と小人は養い難し、その辺から綻びが出来るかもしれねえ」
「ご忠告か、有難えなあ」俄に香具師は苦笑した。
「悪いことは云わねえ。機嫌を取って置きな。それには眠剤が一番いい。吹管を付けて献上して見るさ」
「うん、可いかもしれねえなあ」香具師は鳥渡頷いた。
「ではお別れとやらかそうぜ」
「おお大分遅くなった。では俺等は帰るとしよう。左様ならばご老体」
「もうお帰りか、復の逢う瀬」
「アッハッハッハッ芝居がかりだ。だが爺さんじゃあ色気がねえ」
「何んだ何んだ物を貰って、小言を云う奴があるものか」
「そこらが悪党と云う
前へ 次へ
全86ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング