、迚《とて》も言葉では云い現せねえ」
「美しい景色が見えたろう」
「天国と極楽と竜宮とを、一緒にしたような景色だった。……だが何うも体が怠い」
「そいつあ何うも仕方がねえ。この眠剤の性質だからな」
「俺は動くのが厭になった」
「アッハッハッハッ然うだろうて。そいつも眠剤の性質だ」
「俺は働くのが厭になった」
「アッハッハッハッ然うだろうて。そいつも眠剤の性質だ」
「俺は動かず働かず、眠剤ばかりを飲んでいたい」
「いと易いことだ、持って行きねえ。沢山眠剤を持って行きねえ。伝手《ついで》に吹管を持って行きねえ。そうだ二三本持って行きねえ」
「や、そいつあ有難え。では、遠慮無く貰って行こう」
「いいともいいともさあ持ってけ」
一五
老人は二本の吹管と、箱に詰めた眠剤とを取り出して来た。
「ところで」と老人は笑い乍ら云った「お前、尾張様へ取り入っているそうだな」
「うん」と云ったが渋面を作った。
「どうやらお愛妾お半の方と、仲が悪いということだが」
「そんなこと迄知ってるのか?」
「そこはお前蛇の道は蛇だ。そんな事ぐらい解っているよ」
「へえ然うかい、驚いたなあ」香具師は不快な
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