然うかい、それは有難いねえ。妾ァどっちでもいいのだ。では其薬を妾にお呉んな」
「今は無い、二三日待て」
「ああ待つとも待ってあげよう。お前も随分の悪党だ。妾だって是れでお姫様じゃあ無い。悪党同志の約束だ。冥利に外れたこともしまい。では二三日待つことにしよう。……では妾は帰って行くよ」
出入口の蓋が退けられた。女の立ち去る気勢がした。老人は注意して床下を出た。表の方へ行って見た。一丁の駕籠が走っていた。
老人は再び裏へ廻り、出入口の蓋をした。それから三日月を肩に負い、自分の屋敷へ引っ返して行った。
南蛮温室の寝台の上で、尚香具師は眠っていた。
と、ノロノロと身を蜒《うね》らした。軈て幽に眼を開いた。一つ大きな欠伸をした。
「ああ素晴らしい夢を見た。……だが何うも体が怠い」寝台の上へ起き上った。
「お若いの、どうだった?」その時側で人声がした。そこに老人が立っていた。気味悪くニヤニヤ笑っていた。
「おお老人、其処にいたのか。全くお前さんの云う通り、この眠剤は素晴らしいね。俺はすっかり驚いて了った」
「音楽の音が聞えたろう」
「おお聞えたとも、聞えたとも、何んと云ったら可かろうなあ
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