「真先に妾は訊きたいのさ。ああ、お前さんの本当の素性を」
 老人は返辞をしなかった。

     一四

「おやおや香具師さん黙っているのね。さては云うのが厭なのだね厭なものなら無理には聞かない。では此奴は引っ込まそうよ。その代り妾の素性だって、お前さんへは話さないからね。……お次はいよいよ本問題だ。ねえお前さん何んと思って、お前さんは尾張様へ取り入ったんだい?」
 だが矢張り老人は返辞をせずに黙っていた。すると女は笑声を上げた。
「おやおや復もや無言の行だ。こいつも云うのが厭だと見える。だがね、お前さん、妾にはね、そのお前さんの目的がちゃあんと解っているのだよ。嘘だと思うなら云ってあげようか? そうだ遠廻わしに云ってあげよう。あんまりむき出しに云われたらお前さんだって可い気持はしまい。……お前さん天主閣へ上りたいんだろう? 決して人を上らせない、天主閣の頂上へさ。ホ、ホ、ホ、ホ、お手の筋だろうねえ」
 女の声は暫く絶えた。
「さて」と女の声がした。「安心おしなさいよ邪魔はしないから。お前さんの出ようさえ気に入ったら妾の方から助けてもあげよう。そうさお殿様へ口添えして、上ることの出来る
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