女の声は嬉しそうであった。「実はね、妾は心配だったのさ。大悪党のお前さんの事だ。家にも色々からくり[#「からくり」に傍点]があろう。この口一つふさいだ[#「ふさいだ」に傍点]所で、妾の知らない他の口から、ヒョッコリ出て来ないものでもないとね。ところがお前さんの言葉つきで推すと、そんな心配は入らなそうだね。他に出口が無いと見えて出してくれ出してくれって云ってるじゃあないか。嬉しいねえ。是で安心したよ。殺すも活かすも此方のままさ。そこで掛合いも楽ってものさ。案外、お前さん凡倉だねえ」
「ううん」と老人は唸って了った。「驚いたなあ大変な女だ。とまれ愛妾のお半の方と、香具師とは関係があるらしい。どんな関係だか知らないが、俺を香具師だと信じているらしい。よしよし其奴を利用して、二人の関係を聞き出してやろう」そこで老人はこう云った。
「いや私は香具師では無い。だが香具師だと思うのなら、香具師になってやってもいい。どんな掛合いだか云ってごらん」
「そろそろ本音を吐き出したね。だが作り声は気に食わないねえ。まあそんな[#「そんな」に傍点]ことは何うでもいい。では掛合いにかかろうかね」女の声は改まった。
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