の通りだ、花が咲いている」
「そんな事は解っている」
「どうしてどうして解るものじゃあねえ。と云うのは花の種類よ。おいお若いの、先ずご覧、幾色の花があると思う」
「ふん」と香具師は憎くさげに「花作りじゃああるめえし、そんな事が何んで解る」
「三百種あるのだ、三百種」
「へえ、そんなにも有るのかい」香具師も鳥渡《ちょっと》驚いたらしい。「そんなに作って何んにするんだ」
「しかも普通の花じゃあ無い」老人は俄に真面目になった。「毒草だよ、毒草だよ」
「毒草!?[#「!?」は1マスに横並び]」
 と香具師は鸚鵡返した。少し顔が蒼白くなった。
「おいおいお若いの、何が恐ろしい。恐ろしいことは些少ない。毒草が厭なら云い換えよう、薬草だよ、薬草だよ」
「ははあ成程、薬草なのか」香具師は顔色を恢復した。
「おい、お若いの、あの花を見な」
 老人は一つの花を差した。五弁の藍色の花であった。
「何んだと思うな、この花を?」
「ふん、俺が何んで知る」
「亜剌比亜《あらびや》草よ、亜剌比亜草だ、絶対に日本には無い花だ。本草学にだって有りゃあしない。ところで此奴から薬が採れる。名付けて亜剌比亜麻尼と云う。一滴で
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