虹でも落ちたかのように、紅白紫藍の草花が、爛漫と咲いていたからであった。
建物は仕切られていなかった。端から端まで見通された。左右の壁に棚があり、それが階段を為していた。その上に大小無数の鉢がズラリと行儀よく並べられてあり、それが一つ一つ眼眩くような、妖艶な花を持っているのであった。
部屋の恰度真中所に、一基の寝台が置いてあり、その上に老人が横臥っていた。八十歳あまりの老人で、身に胴服を纏っていた。手に煙管を持っていた。それは非常に長い煙管で、火盞が別して大きかった。
香具師は老人をじっと見た。
「あっ」とばかりに仰天した。見覚えのある老人だからで。――
「おっ、お前か、爺く玉奴!」香具師は声を筒抜かせた。
「お若いの、よく見えた」老人は寝台から起き上った。「無作法な奴だ、爺く玉だなんて言葉を謹め、若造の癖に」こうは云ったが老人は、別に怒ってもいないようであった。
「驚いたなあ」と香具師は、部屋の中を見廻わした。
「何んだい一体この部屋は?」
「流石のお前にも解らないと見える。教えてやろうか、南蛮温室だ」
「え、何んだって、南蛮温室だって? で、一体何んにするものだ?」
「ごらん
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