! そうして続いて倒れる音! 民弥に切られて香具師の一人、ぶっ倒れたに相違ない。
またもや香具師共はサーッと引き、遠巻きにして取り巻いたが、「強いぞ強いぞ、案外強い! と云ったところでたかが女、蹴倒せ蹴倒せ踏み倒せ!」
そこでまたもや寄せて来た。
民弥武道には勝れても、若い女のことである、敵を二人迄切っている。呼吸《いき》切れせざるを得なかった。ハッ、ハッ、ハッと大息を吐き、疲労《つかれ》て萎る両足を、グッと構えて姿勢を正し、振り冠った懐刀月光に顫わせ、ムーッと香具師共を睨み付けた。しかし以前《まえ》程の元気はない。
「一度に寄せろ、占めた占めた! 女は疲労た、からめ[#「からめ」に傍点]捕れ! この機を外すな、からめ[#「からめ」に傍点]捕れ!」
香具師共ドッと押し寄せた。
以前程の元気はないのである。民弥は疲労ているのである。そこを狙って多勢の香具師共、一度に寄せて来たのである。危険だ危険だ捕らえられるかも知れない。
だがこの時声がした。
「強いぞ強いぞ侍めは! あぶないあぶない一時逃げろ!」
他ならぬ猪右衛門の声である。
つづいて右近丸の声がした。「お助けいたす、
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