顎鬚を顎に貯《たくわ》え、手に鉄棒をひっさげている。年の頃は四十五六、腹巻で胴を鎧っている。星影左門《ほしかげさもん》という人物である。
「唐姫《からひめ》殿はご無事かの?」嘲笑うように訊き返した。
「うむ」と云ったが浮木の姥は、かなり周章《あわて》た様子であった。「いつ其方《そち》達は上洛したぞ?」
「ご覧の通りさ、たった今さ」
「で、何のために上洛したな?」
「京師《みやこ》を掠めようその為さ」
「が、そいつはよくあるまい」浮木はその眼をひそめたが、
「あの信長めが京師を管理し、威令行なわれているからの」
「そんなことには驚かないよ」星影左門は笑ったが「何の検断所の役人どもに、指一本でもささせるものか」
「が、それにして何のために、五六十人ばかりの同勢で、いまごろ上洛して来たな?」
「唐姫殿が欲しいからよ」
「ふふん」と浮木は嘲笑った。「お前のような人間は、唐姫様にはお気に召さぬそうな」
「それは昔から解《わか》って居るよ」星影左門も負けてはいない。
「が、腕ずくでも手に入れて見せる」
浮木の姥はまた笑ったが、「我等の勢力を知らぬと見える」
すると左門も笑ったが、「そういうこと
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