以外に、逃げて行かなければならないような、大事な理由があるのだろうか?
大事な理由《わけ》があったのである。
「山から下って来た庭師風の人達、南蛮寺の謎を解こうとして、妾《わたし》を尋ねて来たという、ではやっぱり敵なのだ。うかうかしてはいられない。危難を救われた恩はあるが、いつ迄も縋っていようものなら、難題を出されないものでもない。逃げよう逃げよう逃げて行こう!」
で、民弥は逃げ出したのである。
仰天したのは浮木の姥で、「民弥殿、民弥殿、逃げてはいけない。何も恐ろしいことはない。戦いは我らの勝でござる。そうして我らは悪者ではござらぬ。お帰りなされ、お帰りなされ」――で後を追っかけた。
何で民弥が帰るものか。民弥は懸命に走って行く。
木間を潜《くぐ》り、坂道を転《まろ》び、月光を蹴散らし、町へ町へ! 町の方へと走って行く。
しかし民弥は逃げられなかった。
行手に盛り上った森があり、そこの前まで駈けて行った時、五六十人の同勢に、グルグルと取り囲まれてしまったのである。
28[#「28」は縦中横]
洵《まこと》に異風な人達であった。
大方の者は赤裸で、茜《あかね》の下帯
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