れている。とはいえ命がけの場合である。いつもの二倍も走ることが出来る。
一所懸命走って行く。走りながら猿若は喋舌《しゃべ》るのである。
「ねえ民弥さん民弥さん、俺らを疑っちゃアいけないよ。安心して俺らに委《まか》せるがいい。もっとも俺らも悪いことをした。人形を盗もうとしたんだからなあ。もっともそいつは失敗したが。……ええとそれからもう一つ、もっとよくないこともした。と云うのは民弥さんのお父《とう》さんを……どうもこいつだけは云えないなあ。あんまり酷いことをしたんだからなあ。……だってそれだって本心からじゃアない。みんな親方に云い付けられたんだ。そりゃア悪事には相違ないが、だって親方の云い付けなら、厭だと云うことは出来ないからなあ。……オヤオヤ足音が近くなったぞ! どれどれこの辺りで振り返ってみよう……あッいけない追い逼って来た。ナーニ大丈夫だ、逃げ通してみせる。一町とは逼っていないんだからなア。……そりゃア俺らは善人ではない。が、今では善人だよ。悪戯《いたずら》小僧には相違ないが、だって今ではいい子供だ。だからよ民弥さん堪忍しておくれよ。ね、ね、ね、昔の罪はね! ……そりゃアそうとど
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