障子を開けると縁へ出た。
 午後の陽が中庭にあたっ[#「あたっ」に傍点]ていた。
 お色は相手の気勢に引かれ、立ってその後へ従った。
 縁は廻廊をなしていた。その外れに離れ座敷があった。不思議なことには、昼だというのに、雨戸がピッタリ閉まっていた。離れ座敷の前までゆくと、左伝次は入り口の戸を開けた。最初の部屋は暗かった。間《あい》の襖をサラリと開けた。
 その部屋には燈火《ともしび》があった。行燈《あんどん》がボッと点っていた。


    途方もねえ目違いさ

 一人の武士が四筋の鎖で、がんじ[#「がんじ」に傍点]搦《がら》みに搦《から》められていた。畳の上に転がっていた。それを五人の異形の男女が、真ん中にして囲繞《とりま》いていた。一人は僧侶一人は六部、一人は遊び人、一人は武士もう一人は振り袖の娘であった。娘は胡坐《あぐら》を掻いていた。そうして弓の折れを持っていた。
 左伝次とお色の姿を見ると彼らは一斉に顔を上げた。
 と、左伝次はお色へいった。
「お色殿、この方かね」搦められた武士を指さした。
 ヒョイとその武士が顔を上げた。お色はやにわに、縋《すが》り付いた。
「弓様!
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