うことだが、どういう性質の結社だろう? だがそいつは縁起録を見たら、容易に知ることが出来るかもしれない。明日もう一度叔父貴を訪ね、縁起録の内容を知らせて貰おう。とまれ田沼めと銅銭会とは、関係があるに相違ない。あるともあるとも大ありだ。銅銭会員を利用して、将軍家誘殺を試みたのだ。無理に将軍家を花見に誘い、毒塗り小柄で討ち取ろうとした。ところがそいつが失敗《しくじ》ったので、会員中の美人を利用し、大奥の庭へ入りこませ好色の将軍家を誘い出したのだ。容易なことでは大奥などへは、地下《じげ》の女ははいれないが、そこは田沼がつい[#「つい」に傍点]ている。忍び込ませたに相違ない。だがしかし不思議だなあ。突然消えたというのだから」
彼はブラブラ歩いて行った。
「田沼にいかに権勢があっても、深夜城門を開くことは、どんなことがあっても出来るものではない。だが城門を開かなかったら、城から外へ出ることは出来ない。それだのに突然消えたという。どうもこいつがわからないなあ」
弓之助には不思議であった。
「もしかすると将軍家には、千代田城内のどの部屋かに、隠されているのではあるまいかな? お城には部屋が沢山あ
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