前記天満焼
国枝史郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)天満通《てんまとおり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大阪|天満通《てんまとおり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)膏《あぶら》ののった[#「のった」に傍点]
−−



 ここは大阪|天満通《てんまとおり》の大塩中斎《おおしおちゅうさい》の塾である。
 今講義が始まっている。
「王陽明の学説は、陸象山から発している。その象山の学説は、朱子の学から発している。周濂溪《しゅうれんけい》、張横渠《ちょうおうきょ》、程明道《ていめいどう》、程伊川《ていいせん》、これらの学説を集成したものが、すなわち朱子の学である。……朱子の学説を要約すれば、洒掃応待の礼よりはじめ、恭敬いやしくも事をなさず、かつ心を静止して、読書して事物を究め、聖賢の域に入れよとある。……がこれでは廻り遠い。人間そうそう永生きはできぬ、百般の事物を究理せぬうちに、一生の幕を下ろすことになろう。容易に聖賢になることはできぬ。……ここに至ってか陸象山、直覚的究理の説を立てた。陸象山云って曰く
次へ
全109ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング