いる幾個《いくつ》かのボタンを、時々押すのを見ることが出来よう。その男の押すボタンに連れて、珠が鏡に変わるのである。部屋の広さ三十畳敷ぐらいそこに幾個か円卓があり、円卓の周囲《まわり》に榻《とう》がある。そこで勝負をするのだろう、この時代には珍らしい、トランプが幾組か置いてある。
だがもう一つこの部屋に続き、異様《かわ》った部屋のあることを、ここへ来るほどの人間は、決して決して見落とすまい。寝椅子、垂幕、酒を載せた棚、そうして支那風の化粧をし、又支那風に扮装《みづくろ》った幾人かの若い娘達、そういうもので飾られている、いわゆる酒場――安息所が、そこに作られているのだから。
だがそれにしてもその部屋へは、どうしてどこから入って行くのだろう? 双龍の描いてある一つの扉、そこから入って行くのだろうか? いやいやそうではなさそうである。扉の外は廊下なのだから。……ではどこから行くのだろう? どこかに隠された扉でもあって、それを開けると行けるのらしい。
勝負に勝った連中が、その部屋へ行って飲むのである。
これも充分支那風の、南京玉で鏤《ちりば》めた、切子型の燈籠が、天井から一基下っていて
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