としたので、世人、天満焼《てんまやけ》と称したが)――その一揆の勃発を、中止させようと努めたところ、中斎がそれを諾《き》かなかったので、矩之丞は断念し、大塩中斎の党から脱し、身を完《まっと》うしたとそういうのが、一番真相に近いらしい。
乳母のお繁は悪人ではなかった。ただお久美の信者であって、時々品子の口を通し、源右衛門をして献金させようとしたが、源右衛門は承知をしなかったそうで、それを苦にした娘の品子が発作的に一時気を狂わせ、ああいうことを云ったまでで、そうして品子が父や兄について、近所にいると看破したのは、神経病者にありがちの、直感の結果だということである。
底本:「国枝史郎伝奇全集 巻五」未知谷
1993(平成5)年7月20日初版
初出:「文芸倶楽部」
1927(昭和2)年6月〜10月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※「仰有る」と「有仰る」、「中務大輔」のルビにおける「なかつかさたいふ」と「なかつかさだいふ」の混在は、底本通りです。
※小見出しの終わりから、行末まで伸びた罫は、入力しませんでした。
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