ことにしよう。
 絵巻を貰った六人の子は、ひどく憤慨したものである。
「いったい何んでえこの態《ざま》は!」まず長男の県丸《あがたまる》が口穢く罵った。「六歌仙がどうしたというのだろう! 小町が物を云いもしめえ。とかく浮世は色と金だ。その金を隠したとは呆れたものだ」
「いいや俺は呆れもしねえ」次男の赤魚《あかえ》がベソを掻きながら、「明日から俺《おい》らはどうするんだ。一文なしじゃ食うことも出来ねえ」
「待ったり待ったり」
 と云ったのは小利口の三男月丸であった。
「これには訳がありそうだ。……ううむ秘密はここにあるのだ。この絵巻の六歌仙にな」
「私達は六人、絵巻も六人、ちょうど一枚ずつ分けられる。六歌仙を分けようじゃありませんか」
 四男の鯖丸《さばまる》が意見を云う。
「よかろう」
 と云ったのは五男の小次郎で、
「妾《わたし》は女のことですから小野小町が欲しゅうござんす」
 お小夜《さよ》が最後にこう云ったが、これはもっともの希望《のぞみ》というので小町はお小夜が取ることになった。


    藪紋太郎

 ちりぢりに別れた六歌仙は再び一つにはなれなかった。
「吉備彦の素敵もない
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