然たる鬼火の中で蠢《うごめ》き躍っているのであった。化物屋敷! 百鬼夜行!
で、思わず「むう――」と唸ったのである。
「藪氏、藪氏、お下りなされ」
下から呼ぶ和泉守の声に、はっ[#「はっ」に傍点]と気が付いて紋太郎は急いで梯子を下へ下りた。
「どうでござったな? あの妖怪は?」
和泉守は笑いながら訊いた。
「不思議千万、胆を冷しました」
「アッハハハさようでござろう」
「彼ら何者にござりましょうや?」
「見られた通り妖怪じゃ」
「しかし、まさか、この聖代に。……」
「妖怪ではないと思われるかな」
「はい、さよう存ぜられますが」
「妖怪幾匹おられたか、その辺お気を付けられたかな?」
「はい私数えましたところ二十一匹かと存ぜられまする……」
「さようさよう二十一匹じゃ」
「やはりさようでございましたかな。……ううむ、待てよ、これは不思議!」
「不思議とは何が不思議じゃな?」
「諸侯方も二十一人。妖怪どもも二十一匹」
「ははあようやく気が付かれたか。……まずその辺からご研究なされ」
和泉守はこう云うとそのままむっつり[#「むっつり」に傍点]と黙ってしまった。話しかけても返事をしない。
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