城主である。六万石石川主殿頭。四万八千石青山|大膳亮《だいぜんのすけ》。一万二十一石遠山美濃守。十万石松平大蔵大輔。三万石大久保佐渡守。五万石安藤長門守。一万千石米津啓次郎。五万石水野大監物。そうして最後に乗り込んで来たは土居大炊頭利秀公で総勢二十一|頭《かしら》。写山楼へギッシリ詰めかけたのであった。
やがて全く門が締まると、ドーンと閂《かんぬき》が下ろされた。
後はまたもや森閑として邸の内外音もない。
「いったいこれからどうなるのかしら?」
紋太郎には不思議であった。町奉行直々の出張《でばり》といい諸侯方の参集といい捕り物などでないことはもはや十分解っていたが、それなら全体何事がこの邸内で行われるのであろう? こう考えて来て紋太郎は行き詰まらざるを得なかった。
「上は三十七万石の毛利という外様の大名から、下は一万石の譜代大名まで、外聞を憚っての深夜の会合。いずれ重大の相談事が執行《とりおこな》われるに相違あるまいが、さてどういう相談事であろうか? 密議? もちろん! 謀反の密議?」
こう思って来て紋太郎はゾッとばかりに身顫いしたが、
「いやいや治まれるこの御世《みよ》にめっ
前へ
次へ
全111ページ中71ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング