て一団の人数が粛々と駕籠を囲繞《とりま》いて練って来たが、例によって門がギーと開くとスーッと中へ消え込んだ。
「あれこれ柳生但馬守様じゃ」
 云う間もあらず続いて一組同じような人数がやって来た。


    塀へ掛けた縄梯子

「信州高島三万石諏訪因幡守様ご同勢」
「ははあさようでござりますかな」
 おりからまたも、一団の人数闇を照らしてやって来たが百人あまりの同勢であった。
「藪氏、あれこそ毛利侯じゃ」
「長門国《ながとのくに》萩の城主三十六万九千石毛利大膳大夫様でござりますかな」
「さよう。ずいぶん凛々《りり》しいものじゃの長州武士は歩き方から違う」
 間もなく毛利の一団も写山楼の奥へはいって行った。
 追っかけ追っかけその後から幾組かの諸侯方の同勢が、いずれも小人数の供を連れ、写山楼差してやって来た。
 五万八千石|久世《くぜ》大和守。――常州関宿の城主である。喜連川《きつれがわ》の城主喜連川左馬頭――不思議のことにはこの人は無高だ。六万石小笠原佐渡守。二万石鍋島熊次郎。二万千百石松平左衛門尉。十五万石久松|隠岐守《おきのかみ》。一万石一柳|銓之丞《せんのじょう》。――播州小野の
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