らの慣用手段で、一羽は頭、一羽は尻、一羽は腹、二羽は胴、化鳥の急所を狙うと見る間に一度に颯と飛び掛かった。
 ワッと揚がる鬨の声。お供の連中が叫んだのである。
「もう大丈夫! もう大丈夫!」
 家斉公も我を忘れ躍り上がり躍り上がり叫んだものである。しかしそれは糠喜《ぬかよろこ》びで、五羽の鷹は五羽ながら、投げられたように弾き飛ばされ、空をキリキリ舞いながら枯れ草の上へ落ちて来た。
 五羽ながら鷹は頭を砕かれ血にまみれて死んでいる。しかも大鵬《おおとり》は悠然と同じ所に漂っている。
 物に動ぜぬ家斉公も眼前に愛鳥を殺されたので顔色を変えて激怒した。
「憎き化鳥! 用捨はならぬ! 誰かある誰かある退治る者はないか! 褒美は望みに取らせるぞ! 誰かある誰かある!」
 と呼ばわった。しかし誰一人それに応じて進み出ようとする者はない。声も立てず咳《しわぶき》もせず固くなってかたまっている。これが陸上の働きならば旨《むね》を奉じて出る者もあろう。ところが相手は空飛ぶ鳥だ。飛行の術でも心得ていない限りどうにもならない料物《しろもの》である。ましてや弓も鷹も駄目と折り紙の付いた怪物である。誰が何んのた
前へ 次へ
全111ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング