ら西一町の地点なんだ」
貧乏神の扮装《みなり》をした坂東三津太郎はこう云うと元気を起こして立ち上がった。
灰、煙り、即希望
小次郎も同じく立ち上がり、
「そうだここは宝隆寺から西一町離れている。そうしてここに道標《みちしるべ》がある。そうしてここは畑の中だ。それにお日様も傾いてあんなに西に沈んでいる。道標の影もうつっている。――道標、畑の中、お日様は西だ、影がうつる、影がうつる、影がうつる――ちゃアンと暗号文字《やみもじ》に合っている。さあもう一度掘って見ようぜ」
そこで二人は鍬を取り、道標の影の落ちた所を、根気よくまたも掘り出した。
石や瓦は出るけれど、平安朝時代の大富豪|馬飼吉備彦《うまかいきびひこ》の隠したといわれる財宝らしいものは出て来ない。
二人はすっかり落胆して鍬を捨てざるを得なかった。
「オイ」
と三津太郎は憎さげに、「お前が西丸で盗んだというその在原業平の軸、もしや贋《にせ》じゃあるめえかな」
「冗談いうな」
と小次郎もムッとしたようにいい返す。
「千代田の大奥にあった軸だ。贋やイカ物でたまるものか。それよりお前が長崎の蘭人屋敷で取ったという
前へ
次へ
全111ページ中104ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング